メンタルゴルフ Vol.21 リカバリーショットは成功率〇〇%を目安に

ティーショットを林に曲げて、そこから次のショットを打つ時にどんなことをイメージしていますか?

「前方(グリーン)を狙うか、フェアウェイに出すか」の選択をしているかと思います。

「近くのフェアウェイに安全に出したほうがいい」とはよく言われますが、一方で前を狙いたくなる気持ちもありますよね。

狙ったもののトラブルを繰り返してしまい、後悔してしまった経験もあるかもしれません。

そんなときに自分なりのGo/No goの基準があったとしたらどうでしょうか。

余計な迷いがなく、メンタルを整えた状態でショットできると思いませんか?

一打の重みを可視化するStroke Gainedの考え方から、リカバリーショットの判断基準を紹介します。

リカバリーするときは成功率70%を目安に

結論からお伝えすると、リカバリーショットの時は成功率70%を目安にしましょう。

なぜ70%なのか。なぜ50:50ではないのか。

アメリカPGAツアーで注目されているStroke Gainedの考え方から説明していきます。

マーク・ブローディさん著書の『ゴルフデータ革命』からの引用です。

解析をするための前提は以下としています。

  • ティーショットを曲げて林に入った
  • 安全にフェアウェイに出したら、そこからピンまで残り200ヤードになる
  • 木の間から狙えないわけではなく、うまくいけば残り100ヤードのフェアウェイまで運べる

①安全にフェアウェイに出す場合

プロは残り200ヤードのフェアウェイから平均3.2打でホールアウトします(下表の黒枠)

そこに、林から出す1打を加えると、平均で4.2打が必要ということになります。

②木の間を通して残り100ヤードまで運べた場合

同じく残り100ヤードのフェアウェイからは平均で2.8打でホールアウトします(下表の青枠)

そこに、木の間を通す1打を加えると、平均で3.8打が必要ということになります。

③木の間を通そうとしたが失敗し、改めて安全にフェアウェイに出す場合

チャレンジしたが木に当たってほとんど進まなかった場合、改めてフェアウェイに出すと2打を費やします。

さらに残り200ヤードのフェアウェイからホールアウトの打数を加えると平均で5.2(3.2+1+1)が必要ということになります。

プロのホールアウトまでの状況別打数 『ゴルフデータ革命』より

まとめると、

①安全に → 4.2打

②チャレンジ(成功)→ 3.8打

③チャレンジ(失敗)→ 5.2打

ということは、②チャレンジが成功した時に①に対して稼げる打数(Stroke Gained)は0.4です(4.2-3.8)。

一方で、③チャレンジが失敗した時に①に対して失った打数は-1.0です(4.2-5.2)。

ではこの結果を比較するとどこで釣り合うのか。

0.4 x 0.72(72%) = 0.288

-1.0 x 0.28(28%) = -0.28

つまり、ショットの成功率が72%を超えていれば、稼げる打数の期待値が失う打数の期待値よりも上回るということです。

以上が『成功率70%』の理由です。

もちろん、状況や残り距離によってまた目安は変わってくるでしょう。

パー5かパー4かによっても変わってきます。

わたしが伝えたいことは、感覚だけで決めるのではなく事実に基づいて裏打ちされた数字を自分の目安にすることで、迷いがなくなるということです。

人間の脳は、考えれば考えるだけエネルギーを消費します。

一日に何回も迷いと決断を繰り返し、そのたびに脳が疲労し、寝ることでリフレッシュします。

だからこそ、基準をしっかり決めて、できるだけ迷いなくプレーしたいですよね。

ちなみに、2022年10月に行われた日本女子オープンの放送において、テレビ中継の解説を務めていた塩谷育代プロも、どなたかのショットの際に「70%の確率なら狙っていい」とおっしゃっていました。

塩谷プロの考えがStroke Gainedに基づいているのかは定かではありませんが、長年トッププロとしてプレーされてきたからこそ、肌感で導き出されているのかもしれません。

自分の『70%』を知っておく

次にポイントとなってくるのが、自分の『70%』がどこにあるかです。

もちろん人によって変わってきます。

林の中から、ベアグラウンドから、深いラフから、どれくらいの確率で打てるのか。

それを知るためには日常のラウンドをどれくらいしっかり記録できているかがポイントでしょう。

練習場ではフラットなマットで打つため、なかなか実際のシチュエーションは再現できません。

だからこそ、日ごろのラウンドでの出来事をしっかり記録しておき、どれくらいの確率で打てているかを知ることがポイントですね。

記憶には個人差があり、良い結果ばかりを覚えている人もいれば、悪い結果ばかりを覚えている人もいます。

どちらが良いか悪いかではなく、そこに自分の思考のクセがあるということです。

偏った記憶だけを頼りにすると、自分の成功率を見誤ってしまうことがあります。

松山プロ「うまくなるには自分を知ること」

2021年のマスターズでメジャー初優勝した松山英樹プロ。

初の著書ではこんな言葉を残しています。

ゴルフが上手くなる方法は何ですか。そう聞かれて、答えを一つ挙げるならば、「自分自身を知ること」

彼方への挑戦 松山英樹・著

自分を知ることは、簡単なようで簡単ではないかもしれません。

「自分」は常に成長していますから、常に自分に向き合うことが大切です。

リカバリーショットの場合は、成功率70%を目安にする。

様々な状況はあれど、これを一つの基準にすれば、あとはご自身の成功率を上げていくのみです。

マスターズチャンピオンの言葉、『自分自身を知る』

まずは自分を知ることがメンタルを整えることにつながります。

ゴルフのメンタルは今この瞬間から変えていくことができます。

このコラムを読んで、どんな気づきがありましたか?

コラムの参考文献

ゴルフデータ革命

マーク・ブローディ 著

吉田晋治 訳 / 牧田幸裕 解説

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