練習時間は長ければいいのか

結果を出すために練習する日々。

様々な時間を削って練習する日々。

「たくさん練習したほうが勝つ」

そう思っている方も多いでしょう。

では、練習時間は長ければ長いほうが良いのでしょうか。

今回はフロリダ州立大学心理学教授アンダース・エリクソンさんが書いた名著『超一流になるには才能か努力か?』から、練習時間の長さについてのブログです。

練習時間は長いほうが良いと思っている方へ。

そうとは言えないかもしれません。

才能よりも努力である

まずこの本の大枠で伝えたいことは、「その分野において超一流になるために必要なことは才能ではなく、正しい努力である」ということです。

試合の順位、世界ランキング、、スポーツは他者との比較がつきまといます。

他者と比較すると、「あいつは才能があるから」と、『才能』という言葉で片づけてしまいがち。

長年の研究で分かってきたこと。

それは『才能』ではなく、『努力』を積み重ねた人が超一流になるということです。

努力=長い時間練習することか

『努力』と聞くとどんなイメージを持つでしょうか。

一日何時間もそれに打ち込み、他の時間(例えば睡眠や趣味や家族との時間)を削ってやりつづけることでしょうか。

本書の答えは、Noです。

世の中には様々な考えがあるので、すべてを犠牲にして練習し続けることが最も効果的だと考える方もいます。

その方を否定したいわけではありません。

こういう研究結果もあるとお伝えしたいのです。

目的意識を持って、効果的な練習を続けることが最良であるとエリクソン教授は言います。

こんな事例があります。

69歳で空手を習い始めたスウェーデン人のベル・ホルムロフさん。

目標は80歳までに黒帯を取ること。

空手を始めて3年ほど経ち、上達速度が遅いと感じ、エリクソン教授に相談した。

エリクソン教授は、ホルムロフさんのレベルに合ったアドバイスをくれるコーチとの個人レッスンを受けるように勧めた。

理由は、いままでのグループレッスンではホルムロフさんはレッスンに完全に集中して没頭していなかったと推測したためである。

ホルムロフさんはアドバイス通り個人レッスンに切り替え、レッスン時間は今までより短くした

そして睡眠時間は毎晩7~8時間に加えて昼寝をするようになった。

いままではメニューを淡々とこなすだけだったのが、意識的に行動して練習するようになった。

ホルムロフさんは緑帯を取り、次は青帯を目指している。

ケガさえしなければ、80歳までに黒帯の目標を達成するだろう。

超一流になるには才能か努力か? アンダース・エリクソン 著

69歳という年齢でなにかを始めた時、誰かに追いつこうとかなにかをかなえようと思ったら、長い時間をかけたくなるものです。

しかし、場合によってはそれは正しい努力とは言えず、時間をただ費やすことで返って集中できなくなってしまいます。

もう一つこんな事例があります。

アメリカの水泳選手、ナタリー・コーグリンはオリンピックで合計12個のメダルを取った選手。

水泳を始めた頃は、プールにいる時間のほどんどを空想していた。

スタミナをつけるためにとにかく泳ぎ、繰り返し水をかき、その結果集中力が途切れてしまうことが何度もあった。

大学生の頃、プールで過ごすときに自分が大きな機会を無駄にしていることに気がついた。

ぼんやり他のことを考えるのではなく、自分の技術に集中し、一つ一つのストロークを完璧に近づけることに集中した。

それからはプールにいる時間をフォーム改善に使うようになり、タイムが伸び始めた。

超一流になるには才能か努力か? アンダース・エリクソン 著

本書の中にこんな言葉があります。

あらゆる点で最高の動きが習慣として身体にしみこむまで、一つひとつを繰り返し正確にやることだ

ダニエル・タンブリス  超一流になるには才能か努力か? アンダース・エリクソン 著より

基本的な体力を身に着ける時間は当然必要です。

しかしやみくもに体を動かし続けることは、脳を含めた体全体のパフォーマンスを考えれば最適とは言えないのです。

練習を長くやればいいという思い込み

過去に練習を長くやって成功した体験があったり、長くやってきた人の体験談を聞くと、練習を長くやることが正しいと思い込んでしまいます。

これを成功体験の誤学習と言います。

もちろん、正しい場合もあります。

効果的でかつ目的意識を持った練習であれば、長く続けることも完全な間違いとは言えません。

ただし、その場合は体も脳も疲労がたまり続けるリスクがあることは忘れないでください。

エリクソンさんはこう言います。

100%の力で短い練習をするほうが、70%の力でもっと長く練習するより好ましい。これ以上集中できないと思ったら、練習は打ち切ろう。そして練習に最大限集中できるように、睡眠はしっかりとろう。

超一流になるには才能か努力か? アンダース・エリクソン 著

練習は長くやったほうが良いと思い込まず、効果的な練習を集中して行うことも試してみましょう!

参考文献

超一流になるのは才能か努力か?

アンダース・エリクソン 著

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